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三井家が収集した茶道具の中で、その中心となるのは陶磁器といえます。なかでも茶碗や茶入、花入や水指などには、釉薬の変化や器の姿などに「景色」を感じ、そのインスピレーションから多くは文学的な銘が付けられています。
器の中に自然を見出し、わび・さびの美を感じる茶道具独特の審美眼を、「景色を愛でる」という括りで取り上げます。銘が象徴する名品の「景色」を自然を見るような心持ちで鑑賞していただきます。

※新型コロナウイルス感染拡大状況等で、本展の開催時期・開館時間等について変更・中止の可能性があります。

三井記念美術館では、2005年開館以来の全館改修工事を、2021年9月から今年の4月まで実施いたしました。改修工事は空調機械設備の更新と、館内および展示ケース内照明のLED化、セキュリティ設備の更新、床の張替、エントランス・映像ギャラリー・ショップのリニューアルなど、全面的に行いました。
その竣工にあたり、ゴールデンウィークより館蔵品によるリニューアルオープンI「絵のある陶磁器 〜仁清・乾山・永樂と東洋陶磁〜」を開催し、引き続きリニューアルオープンIIとして「茶の湯の陶磁器 〜“景色”を愛でる〜」を開催いたします。新たなLED照明による展示をご堪能いただければ幸いです。

展示構成と主な出品作品

展示室 1茶碗

名碗とされる茶碗の多くには、その茶碗固有の「銘」や、その茶碗独特の器形や文様などにちなんだ呼び名、さらには所持者の名前にちなんだ呼び名などがありますが、それらの名称を決める大きな要素は、茶人の間で古くから共有されて来た「景色けしき」という美意識です。

茶碗に限りませんが、その器の形や釉薬の窯の中での変化を、あたかも自然の景色を見るように器の中に景色を見い出し、そこでひらめいた、いわばインスピレーションで付けられた名称が「銘」となります。そこに文学的な背景が加えられて教養の厚みが加わり、和歌がイメージされると「歌銘」と呼ばれたりします。

このような美意識は、日本の茶の湯に独特のものであり、そこには自然の移ろいの中で感じられるわび・さびの審美眼が根底にあるものと思われます。竹の花入や茶杓なども、自然にできた竹の染みなどの絶妙な美的バランスを「景色」として評価し銘が付けられますが、茶碗などの銘も、それと同じ美意識の中に包含されるのではないでしょうか。

図1は、千利休所持とされる高麗茶碗の古三島こみしま茶碗で、秀吉の袋師二徳が所持したとされるところから二徳三島にとくみしまの名があります。この高麗時代の象嵌青磁ぞうがんせいじの流れをくむ茶碗を三島茶碗と呼んでいますが、見込みの文様が三島暦みしまごよみに似ているところからの名称といわれます。これも見込みの文様の景色を、茶人が暦に見立てた例といえます。

図2は、高麗茶碗のうちの粉引こひき茶碗。素地に白泥を掛け、その上に透明釉を掛けて焼く粉引ですが、下半部に水分が浸み込んでベージュ色に変色し、ツートンカラーのようになったところに「残雪」をイメージしたものと思われます。銘は小堀遠州の息子小堀正之まさゆき(遠州流二世・1620〜74)によるものと考えられます。

図3は、高麗茶碗のうちの斗々屋ととや茶碗。全体に枇杷色を呈するなかに一部薄青色に変化した釉景色が、あたかも春霞がたなびくような自然景を連想させます。まさに「かすみ」の銘以外には考えられません。室町三井家十二代 高大たかひろ(1908〜69)が最晩年に枕辺に置いたという遺愛の品です。

図4は、高麗茶碗のなかでも日本からの注文による御本ごほん茶碗で、対馬藩の茶頭船橋玄悦げんえつが、藩主の命により朝鮮の釜山で焼かせたものを玄悦げんえつ茶碗と呼んでいます。立ち上がりが強い椀形わんなりで、高台内の太い箆削へらけずりがそのまま高台脇から腰・胴へと渦状にめぐっています。この器形と景色から、檜などが生い茂った山を表す「まきたつやま(真木立山)」という銘が付けられています。

図5は、重要文化財に指定されている本阿弥光悦(1558〜1637)の黒楽茶碗。黒い釉の一部が縦に筋状になっており、それを黒い雲の間から降りしきる雨に見立てて「雨雲」の銘が付けられています。箱書に表千家六代の覚々斎かくかくさい(1678〜1730)が「光悦黒茶碗 銘雨雲」と墨書しており、覚々斎の命名と思われます。

展示室 2茶碗

ここでは前期に国宝の志野茶碗 銘卯花墻うのはながき(7/9〜8/7展示)、後期に重要文化財の玳皮盞鸞天目たいひさんらんてんもく(8/9~9/19展示)を展示いたします。

図6は、当館の国宝、志野茶碗 銘卯花墻です。日本で焼かれた陶磁器の中で、国宝は2碗しかありませんが、そのうちの1碗です。絵具による絵付けで絵が描かれた陶磁器は桃山時代から始まりますが、その早いものとして志野や織部があります。この茶碗は轆轤目ろくろめ箆削へらけずりが大胆に施され、志野釉の下に鉄絵で簡略な垣根が描かれています。この白い志野釉と鉄絵の景色から「卯花墻」の銘が付けられています。片桐石州(1605~73)の筆とされる箱書と貼小色紙があり、「やまさとのうのはな/かきのなかつみちゆき/ふみわけし/ここちこそすれ」の和歌からの命名とされ、いわば歌銘ということになります。

展示室 3〔如庵ケース〕 茶道具取り合わせ

如庵じょあんケースでは、茶道具の取り合わせです。床には織田有楽筆消息。茶碗は、有楽所持として伝わる高麗茶碗の大井戸茶碗です。

図7は、織田有楽おだうらく(1547~1621)の八月二十日付消息で、不在中に訪ねてきた人へお詫びに酒樽を届けるという内容です。元和年間最晩年の消息と思われます。

如庵は有楽の号で、京都建仁寺正伝院に建てられた茶室の名でもありますが、北三井家十代の高棟たかみねが明治40年頃に入手して東京麻布の三井邸に移築し、さらに昭和12年頃に大磯の別荘に移築されました。戦後の昭和45年頃に名鉄に譲られて犬山城の近くに移築されています。

展示室 4花入・水指

正面ケースに川端玉章かわばたぎょくしょう(1842~1913)の京都名所十二ヶ月のうち、1月から6月までを展示し、その右側のケースで花入と水指を、左側のケースで水指と建水を展示いたします。作品は、和物の信楽・備前・瀬戸・伊賀・仁清、そして南蛮物で、これらの間に応挙と呉春の風炉先屏風を加えます。

図8は、備前徳利花入 銘雨後月うごのつき。もとは徳利だったものを花入に見立てたものです。写真で見るように、胴のぼた餅状の赤い抜けを雨後の月の景色と見立てた銘として解説してきましたが、最近、実はこの裏側の景色を見立てたのではないかと思うようになりました。裏側は展示の実物をご覧ください。

図9は、備前緋襷ひだすき水指。この水指は大きな作品の中に癒着しないように藁を巻いて入れて焼いたもので、藁が土膚に反応した火色の変化が特に美しい作品です。火の襷のような景色から「緋襷」と呼んでいます。

図10は、信楽不識形ふしきがた大水指で銘が山猫やまねこと付けられています。達磨が梁の武帝との問答で「不識」と答えたという有名な故事があり、この器形を面壁座禅の達磨に見立てて不識形と呼んでいます。表千家七代の如心斎じょしんさい(1705~51)が胴に「山猫」と直書しているところから銘は山猫とされています。なぜ山猫なのかはよくわかりませんが、如心斎なりの理由があったと思われます。

図11は、伊賀耳付水指 銘閑居かんきょです。歪みのある器形に自然釉の発色と黒っぽい焦げが醸し出すわびた景色が美しい伊賀焼の水指です。すわりの良いわびた様子を擬人化して「閑居」の銘が付けられたと思われます。銘は表千家五代の随流斎ずいりゅうさいの命名で、底に銘を直書しています。

図12は、瀬戸橋姫手はしひめで水指 銘有明ありあけ。腰まで掛かった瀬戸釉の変化で黒い中に黄色く半月形に残った景色を、夜明けに残る月になぞらえて「有明」と銘をつけたものと思われます。「橋姫手」は瀬戸茶入の分類で、艶のある黒褐釉が特徴ですが、水指でも使われます。

展示室 5茶壺・茶入

展示室5では茶入を展示いたします。大名物おおめいぶつで重要文化財の唐物肩衝からものかたつき茶入 北野肩衝(7/9~8/7展示)をはじめ、中興名物の瀬戸茶入、膳所ぜぜ茶入、薩摩茶入などに、和漢朗詠集の古筆切や帖などを交えての展示です。

図13は、大名物の唐物肩衝茶入 銘遅桜おそざくらです。足利義政(1436~90)が、この茶入が天下の名物「初花」より早く世に知られたならば、この茶入が第一であっただろうとして「夏山の青葉交りの遅桜 初花よりもめつらしき哉」という歌銘をおくったという伝承があります。

図14は中興名物ちゅうこうめいぶつの瀬戸二見手ふたみで茶入 銘二見です。北三井家二代の高平(1653~1737)が元文年間(1736~41)に入手した茶入で、二見手の本歌とされています。金葉集にある「玉くしけ二見か浦の貝しげみ まきえに見ゆる松のむら立」からの歌銘とされていますが、この茶入に付属する松平不昧の添状では、小堀遠州が選び残された茶入のなかから取り上げたところから二度見の茶入との銘が付けられたと記しています。しかし伊勢国出身の三井家にとっては歌銘の方がふさわしく、北三井家九代高朗たかあきと十代高棟たかみねによる明治天皇への献茶でも使われています。

図15は、中興名物の瀬戸落穂手おちぼで茶入 銘田面たつらです。本歌の茶入「落穂」は現在伝わらず、この田面が本歌並みに扱われています。銘は『伊勢物語』の田刈業平の段にある和歌「うちわびて落ち穂ひろうときかませば 我も田面にゆかましものを」から引かれた歌銘です。小堀遠州筆の和歌小色紙掛軸と、本歌「落穂」に添っていた消息と落穂茶入図の写しが掛軸になって添えられています。

図16は、膳所ぜぜ肩衝茶入 銘楽々浪さざなみです。琵琶湖畔の膳所で焼かれた茶入で、近江にちなんで『夫木和歌抄』の和歌「さざ浪や大津の宮に月すめば みえこそわたれ水尾崎まで」からの歌銘です。命名は下冷泉宗家しもれいぜいむねいえによるものです。

図17は、薩摩甫十瓢箪さつまほじゅうひょうたん茶入 銘十寸鏡ますかがみです。瓢箪形の小振りな茶入で、胴の中央の丸い釉抜けの景色を鏡になぞらえて「十寸鏡」の銘をつけたものと思われます。十寸鏡は真澄鏡ますみのかがみとも書き、よく澄んで明らかな鏡を指します。小堀遠州の好みで焼かれた十個の薩摩焼の茶入を、遠州の号「宗甫そうほ」から「甫十ほじゅう」と呼んでいいますが、この茶入にも底に「甫」と「十」の文字が彫られています。

図18は、藤原行成筆とされる雲紙和漢朗詠集の古筆切で、千利休所持として伝わったものです。『和漢朗詠集』の下巻「雲」の断簡で、漢詩と和歌が記されていますが、和歌は『新古今集』にある恋の歌「よそにのみ見てややみなむ葛城の たかまの山の峰の白雲」がとられています。天地に藍や紫の雲形をすき込んだ料紙を「雲紙くもがみ」と呼んでいます。

展示室 6香合

小さな展示室6では、和物香合の名品と、永樂保全・和全の交趾写こうちうつし香合を展示いたします。

香合には銘が付けられたものは少ないですが、器形そのものの名称と、器形から想像した名称がつけられているものとがあります。保全や和全の交趾写しの香合は、龍や獅子、鳥や草花などの器形からの名称です。志野重餅しのかさねもち香合や織部砂金袋おりべさきんぶくろ香合などは、器形になぞらえて付けられた名称で、器形に景色を見ているともいえます。

図19は、志野重餅香合です。鏡餅かがみもちのような重ねた餅をイメージしての名称と思われますが、蓋甲の網目文様や、胴の擂座るいざ文様などから、もとは香炉を写したものと考えられます。しかし茶の湯的には重餅とした方が茶席での機知と季節感が演出できるといえます。

図20は、織部砂金袋香合です。黄瀬戸や志野にやや遅れて始まる織部は、意匠性がより多様となります。この香合も巾着きんちゃく形の器形で、緑釉の余白に鉄絵で幾何学的な文様が描かれています。もとは蓋付の小壺として作られたものと思われ、砂金袋という黄金をイメージさせる名称で香合としているところに茶人の遊び心がうかがえます。

展示室 7楽茶碗・紀州御庭焼

展示室7では、展示室4に引き続き、正面ケースに川端玉章かわばたぎょくしょう(1842~1913)の京都名所十二ヶ月のうち、7月から12月までを展示し、その右側のケースで館蔵の楽茶碗の中から、初代長次郎、三代道入、五代宗入、六代左入の作品と、表千家九代了々斎の作品を展示いたします。

左側のケースでは、文政2年(1819)と同10年(1827)に紀州藩十代藩主の徳川治宝はるとみ(1771~1852)が、和歌山の西郊西浜御殿偕楽園で行った御庭焼で焼かれた作品と十一代藩主徳川斉順なりゆき清寧軒せいねいけん焼を展示いたします。

図21は、樂家初代長次郎(?~1589)の重要文化財黒楽茶碗 銘俊寛しゅんかんです。添状では、千利休(1522~91)が薩摩の門人の依頼で、長次郎の茶碗を三碗送ったところ、この茶碗を残して二碗は送り返されてきたので、『平家物語』にある鬼界島に一人残される俊寛の故事にちなんで命名されたと記されています。俊寛僧都というイメージにぴったりのたたずまいに、銘の不思議ささえ感じられます。

図22は、通称「のんこう」で知られる樂家三代道入(1599~1656)の重要文化財 赤楽茶碗 銘ぬえです。この茶碗も『平家物語』に登場する源頼政みなもとのよりまさの鵺退治からの銘で、胴に刷毛塗りされた黒い景色を、「黒雲一むら立ち来って、御殿の上にたなびいたり」として知られる鵺の出現に見立てたものと思われます。

図23は、樂家六代左入(1685~1739)の黒楽茶碗 銘真紅しんくです。左入は晩年に「左入二百」と呼ばれる赤と黒の茶碗二百碗を焼いており、それぞれに表千家七代の如心斎じょしんさい(1705~51)が銘をつけています。この茶碗はかせた膚の半筒茶碗で、「真紅」の銘が付けられています。黒茶碗に真紅の銘は不思議ですが、かせた黒膚の奥に真の赤を感じたのかもしれません。

図24は、北三井家六代の高祐たかすけが、徳川治宝の御庭焼に参加して、高祐が手造りした偕楽園製の赤楽茶碗です。胴に雁が飛ぶ簡略な絵を描いていますが、秋の雁行の景色に、二百十日頃に吹く野分のわきのイメージを重ねて命名しています。

以上、茶の湯の陶磁器のなかで、釉薬や器形に“景色” を見い出し、ひらめいた銘をつけて鑑賞し、さらに古典文学や和歌の世界に想いを馳せて鑑賞するという、茶の湯独特の審美眼と美意識をご堪能いただければ幸いです。

会期
2022/7/9(土)〜9/19(月・祝) ※会期中、一部展示替えを行います。
開館時間
10:00 〜17:00(入館は16:30まで)
ナイトミュージアム:会期中毎週金曜日は19:00まで開館(入館は18:30まで)
休館日
月曜日(但し7月18日、8月15日、9月19日は開館)、7月19日(火) 。
主催
三井記念美術館
入館料
一般 1,000(800)円
大学・高校生 500(400)円
中学生以下 無料
  • ※70歳以上の方は800円(要証明)。
  • ※リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券のご提示で、2回目以降は( )内割引料金となります。
  • ※障害者手帳をご呈示いただいた方、およびその介護者1名は無料です(ミライロIDも可)。
ナイトミュージアム割引:会期中毎週金曜日17:00以降のご入館で( )内割引料金となります。
入館
予約なしで入館できますが、1階入口で消毒と検温をお願いします。
37.5度以上の熱がある方は入館をご遠慮いただきます。入館にはマスクをご着用願います。また、展示室内の混雑を避けるため入場制限を行う場合があります。
お問い合わせ先
050-5541-8600(ハローダイヤル)

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