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特別展 日本の素朴絵 ―ゆるい、かわいい、たのしい美術―

日本では昔から、様々な形式の作品に緩やかなタッチでおおらかに描かれた絵が残っています。それらはなんとも不思議な味わいを持っており、見る人を虜にします。本展覧会では、ゆるく味わいのある表現で描かれたこのような絵画を「素朴絵」と表現し、様々な時代・形式の素朴絵を紹介することで、新しい美術の楽しみ方をご提供します。また、彫刻にも素朴なものがあり、その一端をご覧いただきます。

展覧会の趣旨

日本では昔から、様々な形式の作品に緩やかなタッチでおおらかに描かれた絵が残っています。それらは「うまい・へた」の物差しでははかることのできない、なんとも不思議な味わいを持っており、見る人を虜にします。

本展覧会では、ゆるくとぼけた味わいのある表現で描かれたこのような絵画を「素朴絵(そぼくえ)」と表現します。しかし、西洋絵画の「素朴派」とは異なり、「リアリズムを目指す表現の人為的・技巧主義的なものを超越した」という意味を含んでいます。 素朴絵は生活の中で様々なものに登場します。絵巻、絵本、掛軸や屏風、時には嗜好品として親しまれ、時には庶民が手の届かない「うまい」作品の代替として、季節行事に使う道具に用いられ、仏画として信仰の対象にもなってきました。また、禅僧などの高名な人物によって描かれた素朴絵も注目されます。

このように過程をたどると、素朴絵は知識人や富裕層だけでなく、どの時代でも「庶民」が主体となって描き継がれ、残されてきた芸術といえます。

本展覧会では、これまで本格的に取り上げられることのなかった、様々な時代・形式の素朴絵を紹介することで、名人の技巧や由緒ある伝来に唸るだけではない、新しい美術の楽しみ方をご提供します。また、仏像や神像などの彫刻にも素朴なものがあり、これらも交えて素朴な美の広がりもうかがうことができます。

主な展示作品

展示室1 - 展示室2 立体に見る素朴 1

素朴絵を見る前に、古い時代の素朴な表現として、埴輪(はにわ)(写真1)や人面の描かれた土器など、立体物の素朴美から入ります。続いて6世紀の仏教の伝来とともに日本美術史を代表する本格的な美術作品が登場しますが、その仏教美術のなかにも小金銅仏などに素朴な表現が見られます(写真2)。

その後、山岳仏教が盛んとなり神仏習合が進みますが、仏像の中でも一木彫像に鉈彫りのような素朴な表現が見られ、また、経塚出土の鏡像(きょうぞう)(写真3)や懸仏(かけぼとけ)、神社に祀られた神像や狛犬など、日本独自の神仏観から生まれてきた庶民的な造形が多く伝世しています。ここでは、そのごく一部をご紹介します。

作品画像
埴輪(猪を抱える猟師) 1個
古墳時代 個人蔵 写真1

作品画像
銅造 誕生釈迦仏立像 1躯
白鳳時代・7〜8世紀 個人蔵 写真2

作品画像
鏡像 子守若宮明神像 1面
平安時代 個人蔵 写真3

展示室2では滋賀県の御上(みかみ)神社に伝わる神馬(しんめ)と馬の口を取る人形(写真4)を展示します。神馬は、日本の馬の彫刻の中では優品といえますが、神馬の口を取る人物の表現は人形のようで、全体に素朴な味わいを醸し出しています。

木造 神馬・口取人形 1組
鎌倉時代・13世紀 御上神社蔵
写真4

作品画像

展示室3 素朴な異界 1

ここでは仮設ケース内に展示室5の素朴な異界に分類される大型の絵画を展示し、茶室展示ケースのガラス面には、透過光フィルムによる「ゆるキャラ」をピックアップした写真をディスプレイします。

地蔵十王六道図 21幅の内6幅
室町時代・16世紀
滋賀・宝幢院蔵
写真15

作品画像

展示室4 絵巻と絵本

絵と文字を組み合わせ、物語の世界をより豊かに味わう文化は、絵巻や絵本の形で古代から連綿と描かれてきました(写真5・6)。現代のマンガのルーツともいえますが、特に室町時代には「お伽草子(とぎぞうし)」や「奈良絵本」と呼ばれる愛らしい絵を伴った物語小説が発達し、貴族から庶民に至るまで、多くの人々を魅了しました。狩野派や土佐派といった、いわゆる本流ではない、無名の絵師の手による素朴スタイルの作品です。テーマは釈迦や高僧の生涯、寺社の縁起といった宗教的なものから、動物を主人公とした寓話や恋愛譚と幅広く、素朴なタッチの絵と相まって、読む者を惹きつけます。不思議なかたちの建物や、子どもが描いたような人物など、ほのぼのとした情感と味わいがあります(写真7・8)。

作品画像
絵因果経断簡 1幅
奈良時代・8世紀 MIHO MUSEUM蔵 写真5(展示期間:8/6〜9/1)

作品画像
つきしま絵巻 2巻
室町時代・16世紀 日本民藝館蔵 写真7

作品画像
重美 長谷寺縁起絵巻 3巻
南北朝時代・14世紀 出光美術館蔵 写真6

作品画像
絵入本「かるかや」 2帖
室町時代・16世紀 サントリー美術館蔵 写真8
(展示期間:7/6〜8/4)

展示室4 庶民の素朴絵 1

古代〜中世を代表する日本絵画の多くは、政治的権力や宗教的権威のもとで、権力者や宗教家の偉大さを誇示し荘厳する造形芸術として制作されたものでした。しかし、そのような流れとは別に、庶民への布教のために庶民の間で描かれた素朴な絵画が存在しました。それが社寺参詣曼荼羅(写真9・10)や社寺縁起絵などです。各地の社寺霊場が描かれていますが、これらは、戦国乱世とともに社寺の経済的基盤が揺らぎ、その打開策として聖(ひじり)や比丘尼(びくに)が諸国を巡って寄進や参詣を勧める勧進(かんじん)活動が行われ、その絵解きのツールとして制作されたものです。また、大型の絵画として伝わる高僧の絵伝や著名な物語、地獄絵なども、絵解きのために制作されたものと思われます(写真11)。

作品画像
県文 富士浅間曼荼羅図 1幅
室町時代・16世紀 富士山本宮浅間大社蔵
写真9(展示期間:8/6〜9/1)

作品画像
伊勢参詣曼荼羅 2幅
江戸時代・17世紀 三井文庫蔵
写真10(展示期間:7/6〜8/4)

作品画像
仏伝図 鈴木猪兵衛筆 6幅
江戸時代・文政13年(1830) 愛知・観音院蔵
写真11(展示期間:8/6〜9/1)

展示室5
庶民の素朴絵 2

近世になると社寺の周辺では参詣者をターゲットに土産物として描かれた素朴な絵画が生まれてきます。その代表が大津絵でしょう(写真12・13)。庶民の素朴絵は、中世の信仰的なものから近世の娯楽的なものへと変わって行くようです。

作品画像
大津絵 外法の梯子剃り 1幅
江戸時代 町田市立博物館蔵
写真12
(展示期間:7/6〜7/25)

作品画像
大津絵 猫と鼠 1幅
江戸時代 町田市立博物館蔵
写真13
(展示期間:8/14〜9/1)

展示室5
素朴な異界 2

地獄や極楽、妖怪や仙界など、異界への畏怖や憧憬は、様々に造形化されてきましたが、素朴な表現による造形は、深刻さを和らげ、かわいらしさすら感じられます。死後の裁きの様子をあらわした十王図(写真14、15)や、付喪神(つくもがみ)たちの活躍をコミカルに描いた絵巻など、絵師たちが想像力をはたらかせ、「この世ならぬもの」を魅力的に表現しています。

また江戸時代には、全国で「奇獣」・「幻獣」が出現したという記録が多数残されています。奇獣のすがたは「脱力系」と評するべき素朴なものです(写真16)。

作品画像
漂流記集 2冊の内1冊
江戸時代 西尾市岩瀬文庫蔵 写真16

作品画像
十王図屏風 8曲1隻
江戸時代・17世紀
日本民藝館蔵
写真14

展示室6 知識人の素朴絵 1

素朴絵は大きく二つに分けることができます。すなわち描き手が意識しない素朴絵と、意識的な素朴絵の二種です。本展が取り上げるのは前者の意識的でない素朴絵がほとんどですが、展示室6と7で取り上げる素朴絵は、描き手が素朴であることに自覚的であった点で、それ以前の素朴絵と大きく性格が異なっています。現代では飲食店の壁などに素朴絵があふれていますが、多くは意識的なものです。その出発点は、江戸時代中期の知識人の素朴絵にありました。

展示室6では、アマチュアの知識人による素朴絵のうち、茶人(写真17)、俳人(写真18)、商人の作品を展示します。

作品画像
鬼図 如心斎(表千家7代)筆 1幅
江戸時代・18世紀 三井記念美術館蔵 写真17

作品画像
三輪鳥居図 其角筆 1巻のうち1紙
江戸時代・17〜18世紀 三井記念美術館蔵 写真18

展示室7
知識人の素朴絵 2

意識的な知識人の素朴絵を、本展では僧侶によるもの、アマチュアによるもの、プロによるものの三つに分類しています。禅僧の素朴絵(禅画)は人々にメッセージを発し(写真19・20)、作画を生活の糧としないアマチュアの素朴絵は描き手の心の内を映し出し(展示室6、写真17・18)、プロによる素朴絵は豊かなデザイン性で人々を魅了しました(写真21・22・23・24)。江戸時代半ばにこれら知識人によるものが登場したことにより、素朴絵の世界は格段に豊かさを増したのです。

作品画像
大黒天図 白隠慧鶴筆 1幅
江戸時代・18世紀 個人蔵
写真19

作品画像
大黒と福禄寿の相撲図
耳鳥斎筆 1幅

江戸時代・18世紀 個人蔵
写真24

作品画像
曲馬図(人間万事) 仙p義梵筆 1幅
江戸時代・19世紀 個人蔵 写真20(展示期間:7/6〜8/4)

作品画像
竹虎図 尾形光琳筆 1幅
江戸時代・18世紀 京都国立博物館蔵 写真21
(展示期間:7/6〜7/25)

作品画像
紅葉図 尾形乾山筆 1幅
江戸時代・18世紀 MIHO MUSEUM蔵 写真22
(展示期間:7/6〜8/4)

作品画像
重文 奥之細道図巻 巻上 与謝蕪村筆 2巻の内1巻
江戸時代・安永7年(1778) 京都国立博物館蔵 写真23
(展示期間:7/6〜7/25)

立体に見る素朴 2 木彫像

展示室1で見たように、彫刻にも素朴な表現がありますが、江戸時代の彫刻では、円空(1632〜1695)と木喰明満(もくじきみょうまん)(1718〜1810)の鉈彫り像が、円空仏・木喰仏の名でよく知られています。ここではその一部を展示いたします。

主催

三井記念美術館、NHK、NHKプロモーション

監修

矢島 新(跡見学園女子大学教授)

親子割引

会期中、親子で来館された場合、乳児を除く中学生以下のこども1名につき、保護者1名の一般入館料(1,300円)を700円にいたします(中学生の方は生徒手帳呈示。他の割引との併用不可)。

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三井記念美術館は、「ECO EDO 日本橋2019」の協力店舗として「日本の素朴絵」展開催中(7月6日〜9月1日)、和服・ゆかた着用の方、またはアートアクアリウム2019の入場券(半券)ご提示の方は、左記料金に入館料を割引いたします。
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